また都道府県や市町村が、住民に行政の内容を理解してもらうための情報公開を徹底させたり、透明さを追及していくための行政手続条例をつくったり、これまで以上の公正で透明な行政への協力が求められよう。さらに監査制度の強化、住民の政策投票、選挙のあり方の改革、なども重要な課題となってくる。
まさに、コミュニティの成熟へと一歩進む段階というべきだろう。
VI.“ガバナビリティ”をこそ
地方分権とコミュニティの成熟を考えさせる格好の材料があった。4月24日、神戸市内のホテルで開かれた「1日分権推進委員会」がそれ。「中問報告書」を受けて国民に理解を求めるための活動の一つであった。広島、群馬、富山の開催地と異なり、さすがに阪神犬震災を取りあげた意見が目立った。
貝原俊民知事は、「主権在官から主権在民へというこの流れは、いまの期をはずせば再びやってこない政府には、依然として地方自治体側に分権を担っていく能力があるのか、と不信感を払拭しきれていないように思う。だが、阪神・淡路犬震災という極限状態にあっても、住民は責任を担えるということを実証したのである。むしろ行政の混乱する中で、住民主体の冷静な対応をみせてくれた。しかも震災の興奮が鎮静した後、いまも、住民のまちづくりへの真筆な参加が続いているのです」と語った。
この意見は、住民サイドの島田誠氏(海文堂書店社長)からも。「被災者同士が支え合って、ボランティアに励んだ。そこには“自立する神戸市民の姿”があった。国もそうした姿をもっと信頼してもいいのではないでしょうか」と述べた。
神戸市は、もともと、まちづくりへのコミュニティ活動という点で、全国の先進地としての活動例がいくつもみられた、その中の一つ、長田地区のコミュニティ活動が、災害の救援活動、などで成果を上げて、各方面から高く評価されたのである兵庫県は、地方分権についても“先進県”で、貝原知事が兵庫県議会で提唱した「中央集権制限法」が地方側の分権への高潮をつくる節目の役割を果たしたのでもある。
今回の1日分権委は、貝原知事の分権への理論が大震災の悲劇に耐え、コミュニティ活動の体験によって、なお発言力を高めたと受けとめたい。
自立できない市民、成熟していないコミュニティがなお少ないことは確かである、自治体と住民が横並び・横結びの関係をつくりあげるために地方政治・行政にいかなる参加、さらには協働をしていくか、地方自治・地域活性化にいかなる役割を果たしていくか、課題は尽きない。自治の原点であるコミュニティと住民の“ガバナビリティ”が問われる」この言葉は「統治能力」と訳されている。20年前のサンファン・サミットで、私は三木首相に同行取材したが、このガバナビリティが各国首脳の間で中心的な課題となった。
このサンファン会議では、アメリカでニクソンからフォードヘと政権が交代し、日本でも田中政権が金脈問題で崩壊した後でもあり、「経済」より「政治」が論じられた。政府と国民の信頼を回復させようとの課題が論議を支配したのである、三木首相は「ガバナビリティというのは、統治能力とともに国民側の“統治される能力”といったものも含めた考え方だ」と説明してくれた。
住民側がいかなる統治を理解し、受容するのか……
地方分権の究極の命題も、やはりそこに帰着するのであろう。

川島正英
(かわしままさひで)
(株)地域活性化研究所代表、朝日新聞社友。日本行政学会会員。
1933年大阪生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
‘56年、朝日新聞に入社。政治記者として、産山愛一郷、石片光次郎、三木武夫氏らを担当、首相官邸キャップ、政治部次長を経て、論説委員、紀集委員。
専門分野は地方政治などで、とくに地方分権、地方活性化を論じ続けた、‘93年5月、フリージャーナリストに。
‘94年4月、株式会社地域活性化研究所を設立した。
専門分野:地方政治、自治体問題、都市政策、選挙制度。
公職:地方分権推進委員会地域づくり部会部会長代理。そのほか地方制度調査会、観光政策審議会、過疎対策問題懇談会の委員、魅力ある観光地づくり懇談会、21世紀型高度情報居住調査検討委員会などの各座長のほか、全国知事会や和歌山県、岡山県、世田谷区、中野区などの審議会・委員会委員もつとめる。
イベント企画としては◇多摩東京遺跡100周年記念事業の協賛ライブ・シンポジウム「地域文化をつくりだす」(1993年)◇テーマパーク「元禄村」オープニングセレモニー(94年)◇前島園子・ユリウスベルガー4都市コンサート(95年)などを主宰。
前ページ 目次へ 次ページ